機能性表示食品の届出をすれば新たに開発した食品の売上を伸ばせると期待できます。ただ、すぐに書類を整えて届出を出せるわけではなく、食品分析を実施しなければなりません。その際に重要なのが分析方法で、誤っている分析方法では認めてもらえない場合があります。
ここでは機能性表示食品に重要な分析方法について概説します。
機能性表示食品では食品分析が必要
機能性表示食品の届出をして販売を開始するためには食品分析が必要です。食品として販売する時点で表示義務がある項目については全て分析をして根拠をもって表記しなければなりません。しかし、機能性表示食品の場合には通常の食品よりも項目数が多いので、もともと食品として販売していたものを、新たに機能性表示食品にして売りたいという場合にも追加で分析が必要になる可能性が高いでしょう。
熱量や栄養成分だけであれば既に検査済みかもしれませんが、機能性表示食品の場合には機能性関与成分についての分析も必要になります。また、安全性を確保するために分析をしなければならない場合もしばしばあります。
機能性表示食品では摂取目安量を表示する必要があり、さらに機能性関与成分の含有量なども求めて表示しなければなりません。摂取の方法や摂取をする上での注意事項などの記載内容を決める際にはエビデンスがなければ責任を持っていなければならないでしょう。
この他にも保存の方法や調理方法などについて注意がある場合にはパッケージなどに書くことが義務付けられているので、必要な分析を実施して特定の保存方法や調理方法を選ばなければならないかを検証することが大切です。
そのため、機能性表示食品として届出をするまでにはかなりの量の食品分析が必要になります。
内容によっては分析方法が決まっている
機能性表示食品の届出をするために行わなければならない食品分析は内容によっては分析方法が決まっています。食品分析では定性分析と定量分析がありますが、定性分析の場合には分析方法の違いによって成分が含まれているかいないかの合否判定が変わる可能性があります。
そのため、定性分析では一般的に合否を決めるための分析方法が定められている場合がほとんどです。
また、定量分析の場合にも分析方法によって数値が変わることがしばしばあります。その違いが問題になるリスクが高い場合には分析方法を定めているのが通例です。ただ、定量分析の場合にはより精度が高いというエビデンスがある場合には他の分析方法を使用できるケースも多くなっています。
典型例として挙げられるのは熱量や栄養成分の定量分析です。タンパク質や糖質、脂質などの量は表示が義務付けられています。分析方法としては酵素処理をしてHPLCによる分析をしたり、乾燥させて水分を測ったり、分離を行って重量を測定したりする方法があります。
栄養成分の種類によって分析方法が定められているのでその通りに実施するのが原則です。
機能性関与成分の種類によっては分析方法が一律ではない
機能性表示食品の場合には機能性関与成分の定量が必要になります。食品中にどのくらいの量の成分が含まれているかを表示しなければならないからです。この定量分析方法については一律で決まっていない場合の方が多く、自社で分析方法を開発しなければならないケースもあります。
一般的には、既に他の機能性表示食品で機能性関与成分として認められているものを使用するときには、既存の機能性表示食品で用いられている分析方法を用います。届出をしたときに消費者庁でも確かに機能性関与成分を必要十分に摂取できる食品になっているとすぐに判断できるからです。
しかし、これから届出をしようとしている機能性表示食品に含まれている成分は自社で開発したもので他社の製品には使われていないというケースもあります。この際には機能性関与成分がどれだけ含まれているかを分析する手法を確立し、その結果を添えて届出をしなければなりません。
定量分析方法だけでなく定性分析方法も確立できた場合には、エビデンスとして合わせて提出すると信憑性が高いと判断してもらえます。
機能性表示食品の届出は販売開始の60日まで?!機能性表示食品の基礎知識や届出
独自の分析方法でも大丈夫なのか
機能性表示食品の栄養成分や機能性関与成分の分析をするときに、独自の分析方法を使っても本当に大丈夫なのかと不安になるかもしれません。基本的に分析方法が指定されている場合には望ましい選択ではありませんが、問題になるわけではありません。
重要なのは独自の分析方法かよく知られている方法かではなく、エビデンスがしっかりとしていることです。ずっと用いられてきていてエビデンスがしっかりとしているなら安心感があります。そのため、熱量や栄養成分では古くから用いられている方法が選ばれています。
しかし、機能性表示食品の場合には機能性関与成分の作用や量については企業が責任を負うのが原則です。そのため、届出の際に提出した書類から科学的に正しいと言えるエビデンスが整っているとわかれば十分と考えられています。
何もエビデンスがないと機能性表示食品として販売できない可能性が高いので注意しましょう。
エビデンスを取得するコツ
独自の成分を使用している機能性表示食品の届出をするときには、その機能性関与成分の分析方法は公的に認められているものがない場合が多いでしょう。その際にはどのような分析方法で定量したかを明確にし、その定量分析方法のエビデンスを揃えなければなりません。
独自の成分の場合には標準品が販売されているわけではないケースがほとんどです。量や濃度がわかっている標準品があれば分析方法のエビデンスを作るのは比較的容易になります。そのため、機能性表示食品の定量分析方法を開発してエビデンスをしっかりと整えるためには標準品の信頼性を高めるのがコツです。
標準品について第三者機関による定量を実施してもらうのが合理的です。文献的に知られている定量法がある場合には比較してみるだけでもエビデンスになります。このような考え方でエビデンスを取りまとめると迅速に届出を行えます。
機能性表示食品の届出を考えたら分析方法を検討しよう
機能性表示食品の届出には熱量や栄養成分だけでなく機能性関与成分の分析も必要になります。分析方法が確立されている場合には踏襲すれば良いだけですが、独自の成分の場合には分析方法のエビデンスを整えなければなりません。
標準品の信頼性があれば分析方法のエビデンスを作るのは簡単だという視点で準備を整えていきましょう。